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一力、中盤引き離す【第71回NHK杯】

 一力遼棋聖(26)は10年連続10回目、孫喆七段(27)は5年連続、5回目の出場。勢いのある若手トップ同士の対決は、一力が孫の一瞬のスキをとらえ、快勝した。解説は張豊猷九段。

一力遼棋聖(左)と孫喆七段

〈第71回NHK杯2回戦・第8局〉
黒 一力遼棋聖 白 孫喆七段

※最終譜のあとに棋譜再生機能があります。

〈第1譜〉1―27

 本局まで、対戦成績は一力の5勝1敗。
 AI(人工知能)が大好きな白12のカケ。黒15のケイマがやや珍しい。「Aのトビも定石。黒15は位は低いが、白からの利きが少ない。この碁の配石では自然です」と張九段。
 黒17のカケに白26のハイなら、右上と同じような進行が予想される。「1図、これも一局です」。白18と変化。黒19のハネに白20と反発し、黒27まで、未解決の形ではあるが、一段落した。「これもAI発の変化です」。
 白20で2図、1と受けるのは利かされ。「黒8まで、両方ふさがれ、白がつらい」。

1図
2図

〈第2譜〉28―39

 白28から左上での折衝。黒29のブツカリは変化球。「3図、黒1のコスミなら普通。黒7まで、これからです」。4図、黒1のツケもある。「上辺、左辺とも白は十分の形で、なんとなくツケにくい」。
 黒35とハサみ、局面は忙しくなる。「黒33で5図、1なら、黒9まで穏やかな展開です」。
 黒39ともう一度押したのがどうだったか。「6図、黒1のマゲがタイミング。黒3から5のカケがいい調子です」。

3図
4図
5図
6図

〈第3譜〉40―62

 白も40では7図、1と左上黒に迫りたかった。「黒2のタタキを許しても、白13まで封鎖できて満足です」。8図、黒2の押しなら、「これも、白に不満なしです」。
 黒43は一力らしい厳しさだが、やや打ち過ぎだった。「白44から48と切られ、白52まで黒が苦戦。黒43では9図、1のトビが普通。黒11まで競り合い、これからの碁です」。
 白56では10図、1と左辺に打つのも有力。「黒2を許しても、白3が左上黒の眼を奪う好手。白7まで、打てます」。
 白62まで、中央で寛ぎ、孫ペースである。

7図
8図
9図
10図

〈第4譜〉63―86

 苦戦を感じているのだろう。黒63が強引な動き出し。白64のツケにも、黒67まで、いっぱいに頑張る。「黒65では11図、1からシメツけるのも気持ちいい。ただ、白6がきつく、白持ちです」。
 白68とカケられ、黒が大いに苦しく見える。一力は黒69から大胆な打ち回しを見せる。捨て石作戦だ。黒71と切り、白84まで目的を達成した。「黒がうまくやりました。形勢は互角です」。
 互角になった原因は、白76。12図、白1とすべきだった。「味が悪く見えますが、左辺の攻め合いは白勝ち。左下隅に、白aのハネが残っているのが大きい」。
 実戦は、黒85、白86を先手で利かされたのが痛い。

11図
12図

〈第5譜〉87―101

 黒87は本手の守りだが、少々ぬるかった。「13図、黒1から3がAIのおすすめです」。
 黒91は受け方を見た。白92と反発したことから、本局最大の勝負どころに入る。「白94は14図、1なら無難。白がよさそうな長期戦です」。
 白96に黒97と踏み込み、決戦模様。ここで、白98としたのが失着だった。「15図、白1のコスミツケしかなかった。白23までは膨大な変化の一例。やや白持ちです」。
 黒99、101と左右を分離し、互いに綱渡りの読み比べである。

13図
14図
15図

〈第6譜〉2―28 通算102―128

 白2から、引き続き競り合いが続くが、黒11までとされ、白の苦戦がはっきりとする。「黒からは15のワタリもある。白は劣勢に陥りました」。
 白16からは必死のシノギ。好転を感じたのか、一力は無理をしない。白28まで、2子の取りを許し、逃がしたものの、右上を大きくまとめた。張九段は「白はひどい目に合いました。はっきりと黒が優勢」と断じた。
 白24では16図、1と頑張りたいところだが、「黒4まで、攻め合い黒勝ちで、白のツブレです」。

16図

〈第7譜〉29―53 通算129―153

 黒29のツギは、Aの切りを見て、何とも大きい。「黒は手厚い碁形なので、紛れにくい。勝勢と言って、いいでしょう」。
 大ヨセが進む中、白42に黒43とツケ、下辺で競り合いに入る。ただ、一力は無理をしない。分断はしたものの、深追いせず、黒53の手抜き。勝利宣言である。黒53で17図、1から3子を取りにいくのは、「白6まで捨てられ、かえって紛れます」。

17図

〈第8譜〉54―100 通算154―200

 左下の折衝。白60のホウリ込みが手筋。18図、白1とすぐにツぐのは、黒2に白3が必要となる。実戦は、白60、黒61の交換のおかげで、黒Aは成立しない。
 淡々と小ヨセが進み、終局が近い。白80で19図、1から眼を奪っても、「黒2が利くので、黒6まで生きです」。

18図
19図

〈第9譜〉1―25 通算201―225

 最後まで打ち切るかと思われたが、孫は黒25を見て、頭を下げた。張九段は「盤面で、15目くらいの差。見応えのある好局。一力さんの充実度が勝りました」と総括した。
 225手完、黒中押し勝ち。(9月24日放送)

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