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第69回碁界の礎百人―チク・リン、名人戦で激突【大竹英雄④林海峰⑧】

昭和53年第3期名人戦七番勝負第4局の様子

 昭和17年生まれの大竹英雄と林海峰はチク・リンと呼ばれ、少年時代からよきライバルでやがては天下を争うと見られていた。しかし二人がタイトル戦でぶつかったのは、意外にも昭和52、53年の名人戦の二回しかない。トップ戦線にまず石田芳夫、そして加藤正夫、武宮正樹、趙治勲、小林光一らが次々と割り込んできたからでもある。
 ここでは昭和53年の名人戦を紹介しよう。林は旧名人戦を含めて通算8期の名人在位。大竹は3期目の名人を狙う。なお前年は林がストレート勝ちして大竹から名人を奪っている。
※第1回~第68回は順次掲載予定です。すぐ読みたい方はKindleの週刊碁をご覧ください。

〈第3期名人戦七番勝負・第4局〉
白 林海峰名人 黒 大竹英雄碁聖 (コミ5目半)
昭和53年10月11、12日、福岡県「大丸別荘」
159手完、黒中押し勝ち
※棋譜再生はこちら

第1譜(1-64)

 〈第1譜〉大竹の2勝1敗で迎えた第4局。大竹の黒番。おだやかな序盤が白32、34と地に走ったため、黒35とトバれて息苦しくなった。白32では35くらいだったか。
 林は白40、42とぎりぎりのしのぎ作戦。黒43を利かそうとしたが疑問だった。

参考図1(黒の厚みに軍配)

 参考図1の黒1とハネ出し、白12までと生かしてから黒13にカケるのが正しい。黒の厚みは全局を圧し、断然打ちやすい。
 白44以下の逆襲がうまく、上辺をワタったうえに白の先手。ここから形勢はもつれる。


第2譜(65―100)

 〈第2譜〉右辺を囲おうとせず、黒65とトンだのが大竹流のスケールの大きさ。中央の白の大石に狙いをつけている。黒69、73は攻めの準備工作。白74で75に受けると、黒Aの割り込みによる切断が痛烈。左右どちらかの白が取られても文句はいえまい。

参考図2(難戦へ突入)

 白78がどうだったか。参考図2、白△を活用して白1とツケたい。黒2が厳しいが、白3とはずして、わけの分からない難戦だろう。
 白78と守ったので黒85、87の利かしがグッドタイミング。白は86から先手を取り、94とツケたのは勢いだった。しかし、こんどは黒97、99の切りがきつい。


第3譜(1―59 通算101―159)

 〈第3譜〉白14が敗着か。参考図3の白1、3として黒4を許す。続いて白a、黒b、白cと確実に生きるか、あるいは白dと右下を備えれば先は長かった。

参考図3(先の長い勝負)

 黒21、23は本気の取りかけ。黒51と切って手数を延ばし、黒57、59でトドメを刺した。攻め合い勝ちである。
 大竹は続く第5局を落としたものの、第6局で決め、4勝2敗で林から名人位を奪った。
(記・秋山賢司)


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