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第70回碁界の礎百人―加藤、4冠を制す【加藤正夫④橋本昌二②】

第17期十段戦五番勝負第4局の対局風景。左は加藤、右は橋本

 昭和54年(1979)のタイトル保持者は次のとおり。
棋聖  藤沢秀行(3連覇)
名人  大竹英雄(連覇、4度目の名人)
本因坊 加藤正夫(3連覇)
十段  加藤正夫(4連覇)
天元  加藤正夫(連覇)
王座  加藤正夫(初の王座)
碁聖  趙 治勲(初の碁聖)
 目立つのは加藤の4冠だ。このとき32歳。初タイトルは29歳と遅かったが、以後、大変な勢いでタイトルをかき集め、事実上のトップを占めた。ここでは4連覇を決めた十段戦五番勝負第4局を紹介しよう。 
 挑戦者橋本は第12期の十段。「十段復帰への意欲を痛いほど感じた」と加藤はいう。

十段4連覇を決めた加藤

〈第17期十段戦五番勝負・第4局〉
白 加藤正夫十段 黒 橋本昌二九段 (コミ5目半)
昭和54年4月13日、大阪市「東洋ホテル」
160手・以下略、白10目半勝ち
※棋譜再生はこちら

第1譜(1-50)

 〈第1譜〉白18のノゾキに黒19とノゾき返したのは橋本の新趣向。黒29までと頑張られたので、白30でAとおだやかに打つ気にはなれない。

参考図1(脱出の呼吸)

 白34、黒35の交換が疑問だった。白34では参考図1の白1と単にツケなくてはいけない。以下白11までを想定して、白の形に余裕があった。

参考図2(簡明な道筋)

 黒43とマガられ、やや白の打ちにくい序盤に。ただし黒も優位に立つチャンスを逃している。当然に見える黒45のハネでは、参考図2の黒1トビが簡明だった。白2を譲っても、黒3を決めて5とトブ。これで十分だろう。
 黒49でもBにトブべきだった。以下白C、黒D、白E、黒49、白F、黒Gと締めつける要領。黒45も49も攻め狙いだが、白Fがあって攻めの利かない石だった。


第2譜(51-100)

 〈第2譜〉白52から54、56と進出して、ひと息ついた。
 黒57が流れを悪くした緩着。何はともあれ、参考図3の黒1とカケるべきだろう。白2、4には黒3から7と押して白の大石に圧力をかける。黒aのノゾキをにらまれているだけに、白がこわいのではないか。

3図(遠目の攻め)

 実戦は白地も大きくなるので、攻めが難しくなっている。黒65ではAにノゾきたかった。白66から68と下辺になだれ込んだのが大きく、白70に先着して明るさが見えてきた。白86と生きて、地合は白有利。黒87の打ち込みは逃せない。


第3譜(1-60 通算101-160)

 〈第3譜〉「白18のところが悩ましかった。一手では地になりにくいからである」と加藤。黒21ではAにツケる筋があった。白Bに黒30がうるさいが、白29にカカえて黒を生かす予定という。外側が厚くなるので、二眼の生きなら腹は立たない。
 実戦の白30までと左辺が確定しては白リード。あとは黒33からの下辺の狙いをどうかわすかである。
 黒45に対して白46とダメを詰めるのが皮肉な好手。これで白47に抜くと、黒Cで全体の眼形が怪しくなる。
 白52までの振りかわりで十分。黒57と白60が見合いになって、大勢は決した。
 こうして加藤の十段戦4連覇なる。しかし翌昭和55年は大波乱が待っていた。
(記・秋山賢司)

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