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鈴木、見事な打ち回し

 高尾紳路九段(46)は21年連続23回目、鈴木伸二八段(32)は6年連続、7回目の出場。実力者同士の“シンジ”対決は、鈴木が中盤の競り合いで抜け出し、快勝した。解説は寺山怜六段。

高尾紳路九段㊧と鈴木伸二八段

〈第71回NHK杯2回戦・第6局〉
黒 高尾紳路九段 白 鈴木伸二八段

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〈第1譜〉1―39

 ともにじっくりした棋風で、後半に勝負をかけるタイプ。意外にも、公式戦初対局である。
 白20まで、早くも持久戦模様。黒25では1図、1とハネ出したくなるが、「白4まで、攻められる一方で、賛成できません」と寺山六段。黒27から左下隅での競り合い。白は、黒39まで穏やかに応じる。「白32で2図、1と頑張るのは黒10まで、白が苦しい」。

1図
2図

〈第2譜〉40―82

黒79(76の上)

 白40は黒の受け方を見た。「仕掛けましたね。打って見たくなります」。黒は51まで、丁寧に受け、黒は地を稼ぎ、白は右辺を安定させ、厚みを得るワカレとなった。「互角です。黒43では3図、1とするのもある。「白8まで、はっきりとしない。黒は実戦の方がからい」。
 上辺を盛り上げながら、右上黒の攻めを見る白52に黒53は気合いの手抜き。最大の大場に先着した。
 白54から本格的な攻めに入る。白72の切りが厳しく、黒が苦しく思えるが、高尾は対策を用意していた。黒73から75のコウだ。黒77という絶対のコウダテがあり、サバけるという判断だ。
 これ以上、強硬手段は続かないと見た鈴木は、白80、82の連打のフリカワリで手を打った。「見事な攻防。互角です」。

3図

〈第3譜〉83―100

 黒83と切り、下辺の形を決めにかかる。白は90まで丁寧に応じ、結構な地を確保した。「中央周辺がどう決着するか。今後の勝負どころです」。
 黒91と上辺白を消しつつ、左辺黒の拡大を図る。そろそろ、ヨセをにらんでの中盤戦である。
 穏やかに打ち進めていた高尾が牙をむく。黒99のツケコシだ。「厳しいですね」と寺山六段。白100で4図、1とさえぎり、正面から戦うのは、「一例ですが、黒12まで、はっきりと白が苦しい」。
 白100と切り、勝負どころを迎えた。

4図

〈第4譜〉1―8 通算101―108

 本譜、わずか8手であるが、形勢は大きく動く。
 中央の競り合いは黒7まで、あっさりと決着した。原因は、高尾が簡明に打ち進めたからだ。
 黒1では5図、1から大きく攻めたかった。「黒7まで、難しいですが、やれると思います」。黒3も6図、1、3が勝った。「白△を取り込み、ヨセ勝負です」。
 黒3、5とあくまでも手厚いが、寺山六段は「黒は形勢判断を誤ったようです。白8の大どころに回り、優勢です」と判じた。

5図
6図

〈第5譜〉9―34 通算109―134

 以降、大ヨセに入る。白が優勢とはいえ、細かい。中央部分の力関係がはっきりとせず、ここが決まれば、計算が立つ。
 淡々と進行する中、緊張が走る。白24に黒25のノゾキが鋭い。白26で29のツギなら、黒A、白B、黒28と切断し、取り掛けを狙う。
 白28のツキアタリが冷静だった。黒29の切りは許したが、白30から中央黒地を減らした上、白34と右下黒の消しに向かった。寺山六段は「細かいながら、白が勝勢となりました」と断じた。


〈第6譜〉35―100 通算135―200

 以降は小ヨセである。小差ではあるが、黒に逆転のチャンスはなかった。


〈第7譜〉1―27 通算201―227

 最後まで打ち切って、白の1目半勝ち。寺山六段は「互いに棋風通りの渋い、丁寧な碁になりました。白が中央の攻防で抜け出し、鈴木さんらしい勝ち方をおさめました」と総括した。
 227手完、白1目半勝ち (9月10日放送)




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