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第16回碁界の礎百人―八段一番乗りをめざして【加藤信①鈴木為次郎③】

 昭和14年(1939)から15年にかけての碁界は、木谷實―呉清源の十番碁、始まったばかりの本因坊戦とともに八段一番乗りをかけた大手合が人気を呼んだ。当時、七段は鈴木為次郎、瀬越憲作、加藤信の長老、そして全盛期を迎えようとしていた木谷、呉の合計五人。最初に八段まで一勝と迫ったのは瀬越だが、敗れて遠のいた。次に迫ったのは加藤。対鈴木戦に白番で勝てば昇段、黒番だと勝っても昇段には届かない状況だ。
 しかし14年11月に予定された大手合は不測の事態が待っていた。鈴木の病気棄権である。棋院当局は困惑した。握っていないので白番黒番が分からない。加藤の白番勝ちとして昇段を認めるか、あるいは黒番勝ちとして七段のままか。このときの加藤のいさぎよさが語り草になっている。打ちもしないで昇段するわけにはいかない、病気回復を待って勝負しようというのである。2ヵ月以上たって、鈴木はどうにか打てるようになった。

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