努力と工夫、積み重ねの軌跡【藤澤一就八段特別インタビュー・前編】
今回は有望な棋士を輩出し続ける藤澤一就八段に、子供に囲碁を教えるコツや強くなる秘訣、囲碁普及など幅広くインタビューで答えて頂いた。3日間連続で記事を公開します。前編は「藤澤八段の歩みから、子供を小さい頃から育てる強み」をまとめました。
棋士への道のり
藤澤八段は小学1年生に碁会所に通うも、1度は囲碁から離れ、そろばんや進学塾に通う。小学6年生の頃、藤沢秀行名誉棋聖に『プロにならないか?』と言われて強制再開。ただ、その頃は10級ぐらいだったそうだ。やがて、院生に入り『プロになるんだ』という意識が芽生え始める。ただ、院生に入った頃、思ったより大変だったという。
――当時、院生に入っていかがでしたか?
「今みたいに子供教室がなく、碁会所で打っていました。当時二段ぐらいで昔の日本棋院の院生はハンデ制(3子まで)。スタートが遅かったので仕方ないですが、院生に入って自分より年下の人に3子置いたんですよ。カルチャーショックでしたね」
――プロ試験の数ヵ月前、院生上位10位以内に入り、真剣にプロへの意識が芽生えたと伺いました。
「当時、試験が1年に1度しかありません。これを逃すと丸々1年、どうするんだろうと思い、必死に頑張りました。友達に合わない、日本棋院に行かない。行って会うと『ボーリングに行こう』とかになるので」
――1日の勉強量は?
「基本的に、散歩と囲碁、読書で特別なことはしていません。10時間とかはとてもやっていないと思います。ただ、当時は棋譜並べと詰碁ぐらいしか勉強方法がなくて大変ですよ。特に棋譜並べは。昔の棋譜は、白黒の手書きの棋譜で1枚に300手近く書かれたものもあります。それをコピーして並べる、子供には苦行です。今はパソコンなどで棋譜再生ができますから、楽になりましたね」
――当時16歳、プロ試験を1回で通過しました。
「本当に運が良かったです。とにかく必死でした。散歩の時、常に詰碁を考えていました。最初は6連勝し、その後1局負けて『連敗は絶対にしちゃだめだ』という強い意識をもっていたのを覚えています」
――試験を通過した後、藤沢名誉棋聖から何か声をかけられましたか?
「『良かったな。お祝い何がいい?』と聞かれ『時計は?万年筆は?』と言われて、いらないと言ったら碁盤を頂きました」
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