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【現代碁の最前線】星のノゾキ定石活用術【上野愛咲美女流名人②】

 今回紹介する手法は、想定しておきたい打ち方の1つ。「知っていたら強いですね」と上野愛咲美女流名人。実戦で打たれたら困惑する打ち方で、どんな意図があり、具体的な受け方は何か、事前に準備したいところ。

「(普段から)実はそんなに石を取ろうとしている訳ではないんですよ(笑)」と上野

ワンポイントアドバイス
 ――上野さんは「ハンマー」の異名を持つ戦いのエキスパートですが、戦う時に注意しておきたい点があれば、教えてください。
 上野「まず、シノぐ場合は『相手の石を攻める』つもりで打った方が良いです。ただ守るだけの展開は避けたいですね」

 ――攻める場合は、石を取るつもりでいく感じでしょうか!
 「普段の手合でも石を取るより、攻めて得することを考えていますよ(笑)。そうですね……。攻める場合は『逆襲に気をつける』こと。これは自分自身も注意している点です」


テーマ図「2線ヅメ戦法」

 白1、3と右上を守った瞬間、黒4と相手の受け方をきくのが注意したい打ち方。右上の薄みを見られるため、白は油断できない戦型です。                                                                                            

1図(黒の意図)

 白1と受けるのは、黒2のツケコシが厳しい追及。黒4まで、aとbを見られて白収拾つかない格好です。

2図(形が崩れる)

 前図を避けるため、白1と受けざるを得ず、黒2以下と封鎖を図られて白イマイチ。続いて、白aは黒b以下で止められます。

 白9、11と強引に突破されても、黒10以下と上辺が固まるので白不満。

3図(大同小異)

 白1と中央へ進出できますが、黒2以下と上辺を固められて白失敗です。

4図(厚みの構築)

 白1、3と脱出を図るのは、黒4以下と強引に封鎖されてしまいます。

 白7から11と上辺の黒3子を飲み込めば、白悪くなさそうですが――、

 黒12以下と上辺を捨て石に、先手で厚みを築かれてしまうため、白不利なワカレになります。

5図(相場の進行)

 白1と切るのが無難。黒2から8と形を決めた後、黒10と右辺に構えて一段落。互角に近いワカレに収束します。


6図(簡明なワカレ)

 白1の受けも候補手の1つ。黒2と上辺を守るなら、白3と根拠を確かめて互角の簡明なワカレになります。

7図(受けの分岐点)

 黒1のツケで止めにくるのが実戦例の多い受け方。白2以下と右上を荒らした後、白はどのように守るべきかが焦点です。

 例えば、白8と守るのは、黒9以下と上辺の攻めに回られます。黒aが利くため、白は見た目以上に厳しく追及されます。

8図(冷静な応手)

 以上より、白1と手堅く守るのが正しい態度。黒2には白3と逃げ出して、上辺のシノギ具合が戦いの焦点になります。


9図(工夫の正体)

 そこで、白1のコスミが黒の意図を崩す有力策。黒2のツケには、白3以下で上辺の白が逃げ出しやすくなった点が白の自慢です。

10図(封鎖回避)

 黒1と受けるなら、白2の三々に入れるのが白の意図。黒3と追及されても、白4以下で封鎖されない形に導けるのがポイント。次に、黒aかbの2択ですが――、

aの変化図1(機敏な利かし)

 黒1と右辺を守るなら、白2から4と相手の受け方を利くのがうまい。「この利かし方は、いろいろな形で現れます」と上野。後に、白aの打ち込みが狙いやすくなる利点が残ります。

aの変化図2(効果的な守り)

 部分的には黒1、3と受けるところ。ただし、黒aに白b以下とコウに弾く手段が残るため、右辺の利かしが白の守りに働きます。

bの変化図(腕力勝負)

 黒1と右上の進出を止めるなら、白2と右辺を割っていきます。この後、黒aやbと抵抗された時、白も全力で応じなければならず、難解な戦いに引き込まれます。



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