第91回碁界の礎百人―ベテラン工藤紀夫の快挙、57歳で天元に【工藤紀夫①柳時熏①】
天元戦は毎年のようにベテランと若手の対決が繰り広げられた棋戦である。平成元年(1989)からベテラン林海峰が趙治勲、小林光一、加藤正夫、山城宏、片岡聡らを破って5連覇を達成。しかし平成6年、林は23歳の柳時熏に屈して6連覇ならず。柳は続いて小林光一、林を降して3連覇。そして平成9年、柳は57歳の工藤紀夫を挑戦者に迎えた。
「すべてにツキがあって」と工藤はいう。天元戦トーナメントで負かした相手がすごい。1回戦から趙治勲、大竹英雄、武宮正樹、挑戦者決定戦では加藤正夫。こうした連中をまとめて破ったのだから、ツキがあったと語るのもうなずけよう。もちろん、ツキだけではない。自己を客観視する冷静さ、非勢でも一発逆転を狙わず、じりじりと差をつめる辛抱強さなどがベテラン工藤にはあったのだろう。
柳との五番勝負は、第1局、2局と接戦をものにして、あと1勝と迫ったところで終盤のコウ争いになり、工藤はコウダテをしないでコウを取って反則負け。いやな負け方だったが、後を引くことはなく、第4局を迎えた。その一戦をご覧いただこう。
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