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第93回碁界の礎百人―依田、打倒趙を果たして名人に【依田紀基①趙治勲⑫】

 趙治勲、小林光一の天下を受け継ぐのは誰か。様々な若手が名乗りを上げた。棋聖における小林覚、王立誠、本因坊戦の趙善津……。ここでは名人戦における依田紀基を取り上げよう。
 依田が注目されたのは誰よりも早かった。昭和59年(1984)、18歳五段で名人戦リーグ入りを果たしたのは当時の最年少記録である。なお、低段者がリーグ入りしても即七段昇段という決まりはまだなかった。昭和58年から平成2年にかけての8年間で新人王戦5回優勝も大変な記録だ。
 このほか主な記録だけを拾ってみよう。平成7、8年は十段戦連覇。8年は碁聖獲得。また同年は三星火災杯決勝で韓国の劉昌赫を2勝1敗で降して初の世界戦優勝。早碁も強く、平成3年以降通算5回の優勝を誇る。
 名人戦に限ると、平成11年の第24期名人戦は挑戦者決定プレーオフで小林光一を破り、初の七番勝負舞台に。趙治勲に1勝4敗で敗れたものの、世紀末の2000年、翌25期はプレーオフで王銘琬を破って連続挑戦を決めた。
 七番勝負はあっけなかった。第1局から4局まで、趙にいつもの闘志やねばりが見られず、いずれも中押し負け。ここでは依田が名人獲得を決めた第4局を紹介しよう。

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