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許、攻めもシノギも充実【第71回NHK杯】

 許家元九段(25)は9年連続9回目、辻󠄀篤仁四段(21)は2年連続2回目の出場。関西棋院所属の若手が令和三羽烏の一角に挑んだが、許が豪腕を発揮して、オサエ込んだ。解説は寺山怜六段。

許家元九段(左)と辻󠄀篤仁四段

〈第71回NHK杯2回戦・第7局〉
白 許家元九段 黒 辻󠄀篤仁四段

※最終譜のあとに棋譜再生機能があります。

〈第1譜〉1―30

 所属棋院が違う(許は日本棋院東京本院)こともあり、公式戦初対局。許は力戦派で知られ、辻󠄀については、「この碁を見る限り、バランスを重視した棋風に思えます」と寺山六段。
 黒5までの立ち上がりは、典型的な昭和風。黒13まで、一転、現代のAI(人工知能)流となる。白14、16が目新しい。「黒3、7の構えに迫ります。ワンセットのAI流です」。
 黒17の両ガカリから白30までも、一種のAI定石。黒は厚みを得、白は地を稼いだ。「互角のワカレ。いろいろな変化があります。黒25では1図、黒3まであっさりと打つのも有力です」。

1図

〈第2譜〉31―56

 黒31と左辺を盛り上げる。白32から黒37までは無駄のない利かし。「左上黒が堅いので、惜しみなく決めました」。
 白38とさらに、右下黒に迫り、そろそろ中盤戦である。「白38では2図、白1と根拠を奪うのもあります。黒は14まで、中央に顔を出します。下辺白がへこみ、今ひとつと見ましたか」。
 黒39からサバキに入る。黒45まで形を作るが、白46からさらに攻めを狙う。白48に黒49と素直にハネたのが問題だった。白50が黒のスキをついた一撃。黒53までは必然で、白54と1子を抜かれてしまった。「黒49では3図、1の様子見が面白い。白2なら黒3と切り、黒7までシャレています。4図、白2と外から受ければ、今度は黒3のハネが成立。白4なら、黒5。黒1と白2の交換のおかげで、白は黒を切断出来ません。実戦、1子を抜かれたのはつらい」。白が早くも技ありだ。白56の切りもきつい。許の豪腕、炸裂である。

2図
3図
4図

〈第3譜〉57―85

白60(57の左)白62(57)

 白58が絶対のコウダテ。黒は59と受ける一手。黒にコウダテはなく、黒61は仕方ない。白62のツギから白64と押し、はっきりと戦機をつかんだ。
 辻󠄀も頑張る。黒65から白70まで、下辺を先手で利かし、黒71と2子を動き、黒75まで右辺を頑張る。「白76一撃し、白が好調です」。
 白80の押しに手を抜き、黒81から、下辺黒大石の守りに向かったのがどうだったか。「黒81では5図、1と受けたい。白2からの攻めがきつい。ただ、強引に取りにいっても、黒13まで死ぬ石ではありません」。

5図

〈第4譜〉86―118

白102(90)黒105(99)白108、黒113、白116各同

 白86が何とも気持ちのいいハネ。黒87、89の後退は仕方なく、白90とツケ、上辺も白の勢力範囲となってきた。
 黒91に白92から96が、豪腕第二弾。黒97に白98とコウにはじき、厳しいこと、この上ない。「白96では97のノビでも十分。下辺黒大石へのコウダテが多数あると見て、コウにいったのですが、やり過ぎの感もあります」。
 非常に大きなコウ争い。黒103のコウダテが疑問だった。「白104とされ、自分の眼形をなくしています。黒103では6図、1とコウをさらに大きくしたかった。白2の切りには、黒9まで。次の白のコウダテが非常に難しい」。
 実戦は、下辺で白のコウダテが続き、黒はコウ争いに勝てない形。寺山六段は「白118と抜き、白は一安心、優勢です」と判定した。

6図 白6(3の上)黒9(3)

〈第5譜〉19―37 通算119―137

 黒19と連打し、中央白の取り込みを目指す。ただ、白は全部を助ける必要はない。白20と臨んだのがピッタリの消し。黒21から攻めかかり、「どれくらい攻めがきくのか。これからの勝負どころです」。
 黒23から白26と上辺に味を付けてから、黒29とカケ、取り掛けを狙う。黒37が渾身の勝負手。肉を切らせて、骨を断つ作戦だ。


〈第6譜〉38―47 通算138―147

 白38が冷静な対応。7図、白1と切ると大変なことになる。「黒6まで、次にaとbが見合いで、ハマリです」。黒39から追及し、黒47まで大石を強引に封鎖した。

7図

〈第7譜〉48―60 通算148―160

 許はシノギを見通していたようだ。白48と眼形を作り、黒51に白52の切りが決め手。白54の逃げが先手となり、白60まで、中央を小さく捨てることもなく、生きを確定させた。「見事なものです。8図、黒1から取りにいっても白6まで。次に、aとセキで生きる手とbと放り込む手が見合いです」。

8図

〈第8譜〉61―100 通算161―200

 以降、大ヨセに入る。黒61は最大のツメだが、紛れるところはなく、白の勝勢である。白80が鋭い踏み込み。「黒81で9図、1から切断するのは、白6まで、ただではすみません」

9図

〈第9譜〉1―22 通算201―222

黒7(5の左)

 白2はヨセの手筋。白8まで、隅を取り、盤面でも白よしである。黒19のオキにドキッとする。白20でうっかり10図、1などと頑張ると、黒6まで大事件となる。
 白22を見て、辻󠄀は投了。

10図

 寺山六段は「許さんの力強い打ち回しが印象に残りました。完勝譜です」と総括した。
 222手完、白中押し勝ち。(9月17日放送)

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