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第21回碁界の礎百人―囲碁評論の先駆者【安永一】

 関山利一本因坊(号は利仙)に橋本宇太郎が挑戦する第2期本因坊戦は、悲劇の本因坊戦といわれる。関山が神経性の奇病にとりつかれ、対局が近づくと極端に食が細くなり、対局日にはまったく受けつけない。第1局に敗れたあとも衰弱が激しく、二ヵ月の療養ののちの第2局は医師が付き添うほどだったが、やはり食事は受けつけない。三日目に悲劇が起こる。
 その場面を毎日新聞の観戦記から紹介しよう。
 観戦記者は安永一(1901―1994)。

 「私はこの原稿を急ぐために対局場の別室でペンを採っている。彼方の室では仰臥したままの本因坊が血しょうを絞る悲痛なウメキ声を発している。吐き気を催すたびに発する血を吐くような叫び声に、皆暗然として隻語を発するものはない」

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