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【現代碁の最前線】小目の一間ジマリへ挑むコツ【牛栄子扇興杯②】

 今回は小目の一間ジマリの攻防で現れる「ノゾキ戦法の応用テクニック」を牛栄子扇興杯の解説でお送りします。巧みな守りへ発展させる2線のサバキや、相手の思惑を外す5線の現代戦術など、知っておきたい知識を2つのテーマで紹介します。

AI研究で成長した点は「余計なことを考えなくなったこと」と牛扇興杯

牛栄子扇興杯のインタビュー
 
――普段の勉強方法を教えてください。
 「主にネット碁で対局し、AIにかけて勉強しています。自分の棋風に合った候補手を探して研究しています」

 ――AI研究を本格的に始めた時期は?
 「3、4年前にAIが手軽に使えるようになってから、本格的に勉強し始めました」

 ――実は3、4年前から成績が少しずつ伸びています(2020年29勝16敗、2021年34勝17敗、2022年38勝20敗)。以前と比べて、何か変わったと実感する点は?
 「手合では『余計なことを考えないこと』を心掛けています。昔は自分でも変な手とわかっていても、確認していました。今では読み切れている訳ではないですが、AIで勉強する内に『多分良い手じゃないだろう』という感覚が磨かれます。考えるべき局面や手に集中できるので、持ち時間を有効に使えていることが以前との違いです」

 ――余計なことを考えないとは、どういったイメージでしょうか?
 「人間的な思考だと『強引に仕掛けられて大丈夫?』や『(読みを入れて)いけそうなら形が悪くても切断したい』など、どうしても考えます。もちろん、それが厳しい場合もあります。ただ、AI研究を続けると、何がやり過ぎでどうすれば良いのか、本格的に読みを入れる前から感覚的に把握できるようになります。AIは効率の良い手を候補にするので、自然と悪くなりそうな手を見極める嗅覚が磨かれているのかもしれません

 ――昔と今で一番成長した点は何ですか?
 「『良い形や打ち方の見本が増えたこと』です。布石など暗記が通じない局面でも、AI研究や多くの棋士の先生に教わった知識を基に、以前より良い手を打てたり、好手を閃くことが増えたと思います」
 
 ――最後に、これからの各棋戦への抱負をお願いします。
 「今年の初め頃は負けが多いですが、SENKOCUPなど良い経験ができましたので、反省をしながらも頑張っていければと思います」


テーマ図1「守りに繋がるノゾキ」

 白2と詰められた瞬間、黒3と様子見するのが有力。本手法は、黒Aと無難に守るより、効率的な守りを期待できる長所があります。

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