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第78回碁界の礎百人―趙治勲、交通事故 重傷を抱えて【小林光一②趙治勲⑥】

 昭和61年が明けて、小林光一を挑戦者に迎えた棋聖の防衛戦を前に、趙治勲は大変な災難に見舞われた。交通事故である。1月6日夜、車で外出しようとして車道に出たとき、ブレーキをかけて転倒したオートバイと接触した。ライダーは全治1週間の軽傷。これだけなら大事には至らない。しかし車を駐車場に戻し、センターライン付近に倒れたオートバイを起こそうとしたとき、うしろからきた乗用車にはねられてしまう。すぐ救急車で病院に運び込まれた。
 1月7日は一日中検査。その結果は全治3ヵ月の重傷。右足の膝からくるぶしにかけて骨折し、骨が外に飛び出している。左足は膝の靱帯切断。左手骨折。頭部にも外傷があったがCTスキャンの結果、脳には影響なし。碁を打つために必要な脳と右手だけが無事だった。翌8日は手術。手術後は両足と左手がギブスで固定された。1月9日に予定されていた名人戦リーグの対石田章戦を趙は打つ気だったが、主治医の反対で不戦敗に。
 こうして1月16、17日の棋聖戦七番勝負第1局を迎えた。その前日、主治医と趙夫人が同乗した読売新聞社の小型ジェット機は羽田空港から富山空港に。対局の途中でドクターストップがかかれば即中止し、趙の棄権負けにするという約束だった。その第1局を紹介しよう。小林は快くイス対局に応じ、趙は車イスに乗ったままの戦いだった。

第10期棋聖戦開幕直前、交通事故に見舞われた趙

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