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【現代碁の最前線】小目の一間ジマリへのツケ手法【許家元九段①】

第59、60期十段位、棋聖戦Sリーグ2位で挑戦者決定トーナメント進出を果たした許九段

 本講座は、棋士達の解説で最新手法や代表的な打ち方を読み解くものです。初回は各棋戦で活躍中の許家元九段が登場します。テーマは「小目の一間ジマリへのツケ手法」です。実戦でよく打たれる手法を2回に分けて紹介します。


テーマ図「ツケ手法の下ハネ」

 白1のツケは小目の一間ジマリに働きかける代表的な打ち方。黒2と受けられた場合、白はどのように受けるべきか、早速みていきましょう。


1図(白不満なし)

 白1と受けるのが出発点。黒2と穏やかに守るなら、白3まで下辺への進出を緩和しながら、大場に走って白悪くない進行です。

2図(反発の受け方)

 黒1から5と分断される進行も想定したいところ。見た目は白が苦しい姿に見えますが――、

 白6から10と下辺を補強して問題ありません。黒11と白2子を制される代わりに、白12以下と下辺を広げられるので、互角以上のワカレです。


3図(穏やかな進行)

 そこで、黒1と受けるのが現代定石。白2から4と形を整えた後、黒5と守るまでは一本道の進行。白6以下が穏やかな収束でほぼ互角のワカレ。

4図(様子見の一手)

 白1と様子見するのも有力。黒2と受けるなら、白3以下と前図同様に形を決めます。白aなどの後続手段が残っており、白十分な戦果です。

5図(3パターンの分岐)

 前図より、黒2と受ける相場となり、白3から5と下辺の黒2子に働きかけます。黒a~cの3通りが考えられますが、互角以上の進行になります。

6図(捨て石の手筋)

 まず、aの変化を見ていきます。黒1には、白2と黒3を交換した後、白4から6と3子を捨てるのが好手順。黒7と受けざるを得ず、白8と厚くして白成功。

7図(反発できない理由)

 前図の途中で、黒1と反発されても、白2以下と下辺を助け出して、逆に下辺の黒を攻める態勢を築けます。本図は白有利な戦いです。

8図(強烈な二段バネ)

 次に、bの進行を見ていきます。黒1と受けるのは、白2から6と押さえ込めるので白良しです。下辺の黒陣を守る必要がありますが――、

 黒7と守られた場合、白8以下と下辺の進出を止めて白十分な戦果です。

9図(明るい石運び)

 黒1、3と封鎖を避けられても、白4以下と左下の白陣を固められるので、白悪くないワカレです。

10図(厚みの構築)

 以上より、黒はcの変化を選ぶことになります。
 黒1と受ける一手となり、白2と下辺を守る流れです。ポイントは、黒3から11と中央を厚くされた場合の受け方です。

 白12、14と守るのは、黒15の好点に回られてしまいます。「どちらかと言うと黒持ち」と許九段。

11図(巧みな整形術)

 そこで、白1のツケコシがダメヅマリを突く手筋。黒2から6と受けざるを得ず、白7以下と安全を確かめながら、aの狙いを残して白悪くないワカレです。


12図(高度な捨て石作戦)

 白1が自在に整形する流行形。黒2には白3で相手の受け方を見るのがポイント。黒4と切られても、白5以下と中央を厚くしつつ、aの好点やbの利きを見て、白が打てる進行です。

 例えば、黒8から10と包囲網突破を図られても、白11以下で白3子を捨て石に外側を厚くできるので問題ありません。

13図(相場の進行)

 黒1と封鎖を避けられた場合、白2と断点を守ります。黒3と下辺に手を戻すなら、白4以下と外側を整形して一段落。互角に近いワカレです。

14図(競り合い)

 黒1と受けるなら、白2と下辺の守りに先着します。黒3には白4以下と右辺を補強して互角の競り合いです。


参考図1(要注意の受け)

 黒1のサガリは気をつけたい受け方。白2と形を決めるのは、黒3から5と分断されて白不利なワカレを強いられます。

 白6、8で黒2子は取れますが、黒9以下と外回りを厚くされて白不満な進行です。

参考図2(不利な戦い)

 かと言って、白1と逃げ出すのは、黒2以下で下辺の白3子に追及されながら、aやbと右辺の白を攻める狙いも残されて白不利な戦いです。

参考図3(無難な受け方)

以上より、白1と受ける相場となり、黒2以下と地を稼ぐワカレに落ち着きます。後に、黒a以下の後続手段があり、白は油断できない戦況です。



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