第25回碁界の礎百人―藤沢、大手合制初の九段に【藤沢庫之助①坂田栄男①】
昭和10年代後半から20年代前半の碁界を賑わせたのは、呉清源を中心とする十番碁(読売新聞)、本因坊戦(毎日新聞)、そして昇段を争う大手合(朝日新聞)である。木谷實と呉が昭和17年に八段昇段を果たしてからは、どちらが先に九段に進むかが焦点だった。しかし両者の白番が多くなったため成績は落ち、九段は遠くなるばかり。しかも呉は19年秋からすべての対局を休み、宗教活動にのめり込む始末だった。21年には橋本宇太郎と藤沢庫之助、23年には岩本薫が八段に昇り、九段一番乗りを争った。
この中で圧倒的な勢いで勝ち進んだのが最も若い藤沢庫之助だった。15歳入段、16歳二段、17歳三段、18歳四段、19歳甲組四段、21歳五段、23歳六段、25歳七段、28歳八段と、最速昇段を記録。24年春には九段の昇段点に達したが、打掛けや不戦の碁を加味したもので、他から文句をつけさせないためにも、残る3戦(対前田陳爾、坂田栄男、岩本薫)に白番で2勝する必要があった。まず前田に勝ち、迎えたのが少年時代からの好敵手の坂田戦だった。
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