六浦、勝負手で逆転【第71回NHK杯】
伊田篤史九段(29)は10年連続10回目、六浦雄太八段(24)は6年連続、6回目の出場。中部総本部所属同士の対決は、六浦が乱戦を制し、逆転勝ちした。解説は張豊猷九段。
〈第71回NHK杯2回戦・第9局〉
白 伊田篤史九段 黒 六浦雄太八段
※最終譜のあとに棋譜再生機能があります。
〈第1譜〉1―18
対戦成績は、本局まで伊田が6連勝と完封している。
白6とツケ、早速、右下隅から競り合いが始まる。黒11まではよく見るが、「白12は新手。1図、白1と切ってから3のノビなら普通で、一番穏やかです」と張九段。難しく打つなら2図。「戦いの変化です」。
黒13では3図、1のツギも有力。「白は2とマゲ、4まで。後に白aのサガリが狙いです」。黒13なら、白14と切る一手で、白18までは一本道だ。
〈第2譜〉19―32
黒19の切りから黒21とし、物騒なことになってきた。「黒19では4図、1もあります。黒9まで、これからです」。
白Aを敢行すれば、大コウである。これをにらんで、白22のツケはコウ材作りの変化球だ。「白Aの爆弾が残っているので、黒は頑張りにくい。例えば、黒23で5図、黒1は白2と切ってくる。黒13まで決めてから、白14を決行。白16をコウ材にして、白よしです」。
黒23から27と穏やかに対応。白28に黒29と右下に一手戻し、競り合いは小休止だ。白30と右辺を割り、白32で一段落。張九段は「面白い変化になりました。五分でしょう」と判定した。
〈第3譜〉33―56
黒33のダイレクト三々から白56まで穏やかに進行する。相場かと思えたが、張九段は黒の打ち方に首をひねった。「黒45では6図、1の打ち込みが厳しい。白2は、黒7まで黒よし。白は7図、2以下の感じ。ただ、これも黒が好調に見えます」。実戦は右辺で白に寛がれ、「白に不満なしです」。
〈第4譜〉57―100
黒57、59と下辺から模様を広げる。じっくり白60には、黒61と右側のふたをした。豪快な作戦に見えたが、張九段は再度、「賛成できない」と首をかしげた。「黒59はAあたり、中央に打つのが普通。黒61もやはり真ん中が気になります」。
白62、黒63の交換がうまい。これにより、白64のツケコシが決まったからだ。黒67で68のシチョウは成立しない(8図)。「黒67は仕方なく、白がペースをつかみました」。
以降、競り合いに入るが、白は無理することなく、外回りに打ち進める。非勢を意識しているのだろう。黒97のツケは必死の踏み込み。力自慢の伊田。白100は当然のハネ出しだ。
〈第5譜〉1―22 通算101―122
黒1の切りに白2とされ、どうサバくのか。六浦は黒3のノゾキをひねり出し、黒7まで1子を取った。ただ、今一つだったようだ。「白10まで下辺に進出されながら、攻められては、今一つでした」。
張九段が示したのが9図。「黒1から白地を削り、黒15まで上辺は軽く打つ。白よしですが、まだまだ難しい」。
黒11から中央で居直るが、白22まで包囲され、ピンチである。
〈第6譜〉23―47 通算123―147
以降の攻防は難解を極める。
黒23から眼形を求めつつ、反撃を狙う。黒にとってつらいのは、ただ生きるだけでは、形勢はよくないことだ。「黒27で10図、1以下なら右下を取れた上、生きますが、地合が足りません」。
黒31のコスミツケが渾身の勝負手。白32に黒33のワリ込み、さらに黒37が絶妙なタイミングでの様子見で、伊田のミスを誘う。
手を抜き、白38から自身の安全を確保したのが重大な失着。黒47と白8子を千切られては、一気に敗勢となった。「白38では11図、1とツぐべきでした。黒2の切りには、白3以下、黒の不利なヨセコウで、ツブレです」。
〈第7譜〉48―63 通算148―163
大激戦が終わり、白48からヨセに入る。黒61、63と味よく抜き、黒の勝ちは動かない。「盤面で10目以上の差です」。
〈第8譜〉64―105 通算164―205
黒105を見て、伊田は投了した。張九段は「伊田さんの優勢な時間が長かったのですが、六浦さんの勝負手が見事に決まりました」と総括した。
205手完、黒中押し勝ち。(10月8日放送)
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