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富士田、万全な足取り【第72回NHK杯】

 富士田明彦七段(32)は6年連続6回目、西健伸五段(25)は2年連続4回目の出場。東西対決は、日本棋院東京本院所属の富士田が終始手厚く打ち回し、快勝した。解説は松本武久八段。


〈第72回NHK杯2回戦・第8局〉
黒 富士田明彦七段 白 西健伸五段

富士田(左)と西

※最終譜のあとに棋譜再生機能があります。

〈第1譜〉1―34

 各棋戦で活躍する富士田はトップ棋士として、すっかり定着した感がある。
 西は関西棋院の所属。1回戦で山田規三生九段を破り2回戦に進出した。富士田は1回戦シード。今年1月、早碁棋戦の竜星戦で対局があり、富士田が制している。「富士田さんは手厚く、丁寧な碁。着実に力をつけています。西さんは所属棋院の違いもあり、よく存じないのですが、手厚く、大局感に明るい印象」と松本八段。
 立ち上がり早々、AI(人工知能)流が現れる。黒1、3、5の構えである。特徴は黒5と星からの小ゲイマジマリ。昭和時代は、小目のシマリが優先されたものだが、数年前、AIの「金毛測試」がネット碁で打ちだし、好成績を収めたことから、時おり見られるようになった。AI流の最前線と言っていいだろう。「黒7までが金毛流の基本形です」。
 白16まで、互いに大場を打ち合う。黒17とツケ、左上隅から競り合いに入る。白24までは定型の一つ。白20で1図、1から5もよく見るが、「黒6の押しがピッタリ。黒16までの競り合いは、白が攻められ、苦しい」。
 軽く黒25に、白26から30とふんわりと迫る。「雰囲気が出ています。白26で2図、1から強引に切断するのは打ち過ぎ。黒16と攻められ、今一つです」。
 黒は31から33と冷静に対応し、サバキ形。白は34まで外回りに構え、一段落。「どちらかと言うと白を持ちたい。黒31では3図、1からズンズン押していくのも有力。いわゆる“車の後押し”ですが、本局の場合、配置的に悪くありません」。

1図
2図
3図

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