生き残った戦法は昔の方が多い?古碁の魅力と可能性【大橋拓文七段インタビュー】
今回は古碁の魅力や特徴について、大橋拓文七段にインタビューをお願いした。「僕らが多分、人生で一番勉強していた20~30年前が、一番進歩していなかったかもしれません」と衝撃の事実を語られた。歴代の棋士の偉大さや、古碁から見える現代碁の異様さなど、話題盛りだくさんでお届けします。
秀策の卓越した勝負術
――一力遼棋聖が道策を尊敬していると話していました。『300年前の棋譜が今でも勉強になる。自分の碁は300年後に並べられる自信がない』と。
「僕も道策ファンなので嬉しいですね。個人的には3年前に寺山くん(怜七段)と古碁の本を出して、その時に秀策と秀和をAIで調べました」
――まず、秀策の印象を教えてください。
「秀策は細かい形勢での後半戦が強い。例えば、耳赤の局では百戦錬磨の幻庵に、ジゴか1目差で踏ん張り、最終的に勝ちました。AIでグラフ化すると、後半戦で勝率50%前後の均衡状態を、幻庵が抜き切れないことを表しており、秀策の勝負術が高いレベルであることを物語っていました」
――有名な秀策流と呼ばれる打ち方もあり、序盤の打ち方に定評がある印象が強かったのですが。
「序盤は品行方正に打ち進めているのは事実。ただ、形が良いとよく言われていたのが、実は若干ぬるかったのかもしれません。むしろ、形や筋などのセオリーが通じない、中盤のドロドロとした戦いこそ、秀策の強さが発揮されます」
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