【筑波大学】前田良二八段の「囲碁で培う思考力」
「ミライを育てる」の第3回は筑波大学の開講授業「囲碁で培う思考力」を紹介する。
前田良二八段が2015年から講師を担当している。受講者数は40名。1コマ75分の授業を1日2コマで10週間の全20コマ授業が行われた。今回取材したのは19、20回の最終授業。
最終授業は前の週の授業アンケートに書かれた学生からの質問を、前田八段が一つずつ答えるところからスタートした。質問の内容は講義で解説した囲碁の内容から、棋士によって得意の戦法があるか、前田八段の趣味は何かなどバラエティー豊か。前田八段はその一つ一つに丁寧に答えていた。その後黒板に貼った大盤で定石やシチョウについて学生に問題を出しながら解説を行った。
この日のメインイベントは前田八段の九路盤五子局の指導碁。学生を一度に10名相手にし、対局が終わると別の学生が代わる代わる指導碁を受ける。当日出席した34名全員が前田八段から指導碁を受けた。指導碁の結果は前田八段の23勝11敗で、学生は真剣に盤に向き合い勝敗に一喜一憂していた。
指導碁を待つもしくは指導碁が終わった学生は学生同士で19路盤の対局を行っていた。学生は熱心に対局していて、布石や定石などが他の大学以上にしっかりしている印象を受けた。
後半の授業では最新のプロの対局の解説をした。学生は真剣に一手一手の解説に耳を傾けていた。
19回と20回の講義の間の休憩時間では、筑波大学の囲碁部が部の宣伝を行っていたので話を伺った。
「今は10名で活動していて、去年この授業で囲碁を覚えた人が2人入ってくれました。2人は有段の詰碁など時間を使えば解けるくらい強くなっています。今までは大学のリーグ戦はメンバーの予定が合わなく出ていませんでしたが今後出たいと考えています」
授業のサポートをしてくださっている白川先生と八森先生のお二人からお話を伺った。
・今年の授業を受講している学生の印象を教えてください。
白川先生「普段の講義より集中が続くと感じています。学生曰く他の授業より頭を使うそうなのでいいと思います。また学生たちは学部や学年がいろいろなので明るい雰囲気があり、普段は接しない学部の人達と仲良くできるというのも喜んでいます」
八森先生「学生は真剣にやっていて、ばらつきはあるが強くなっていっています」
・前田八段の授業の印象を教えてください。
白川先生「前田先生は理屈ではなく実戦重視だと思います。定石を並べたり先生がプロの対局を紹介したりしています。学生には自由に打たせることが多いです」
・休憩時間に囲碁部が宣伝していて、そこで昨年の授業から2名入ったというお話を伺いました。こういったことは今までもありましたか。
白川先生「例年そういったことはありませんでした。おととし囲碁部は一回廃部になり、今の囲碁部は去年新しくできたものです。今までの囲碁部員と受講生では棋力の差があり囲碁部に入ることはありませんでした。例年授業で強くなった学生で囲碁が続けたいという人もいたけれど、ちょうどいい受け皿がなかった。今の囲碁部はゆったりできる雰囲気がありいいと思います」
講師の前田八段に授業について何点か伺った。
・筑波大学の学生の印象を教えてください。
「みんなとても熱心に囲碁をやっている印象です。そのため上達も早いです」
・今日の指導碁の感想を教えてください。
「学生はプロと打つのは初めてなので、この指導碁ではできるだけ本気で遠慮なく打っています。プロの強さに触れることで囲碁の奥深さがわかってもらえると考えています。前はもっと勝っていましたが、毎年学生が強くなっています」
・学生たちは布石がしっかりしているように感じました。教える際に気を付けていることや特徴はありますか。
「ここの学生は自分の頭で考えられるので相手がプロだとしても鵜呑みにせず質問してきます。他の大学では9路盤から13路盤を経て19路盤をやる授業もありますが、筑波大学では9路盤の次にすぐ19路盤を使います。いきなり19路盤で大丈夫かなと思いますが、やってみたら結構やれる。せっかく19路盤を使うのであれば、布石の考え方をやれる。学生が面白いと思われることをやるようにしています。例えば布石の基本であったり、逆ヨセや両先手などの難しいヨセも教えます。完全に理解していないかもしれないが囲碁ってこんなに考えて打つものなんだと思って純粋に感動してくれます」
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