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井山、復権の3冠目【大和ハウス杯第62期十段戦五番勝負第5局・棋譜解説】

 芝野虎丸十段に井山裕太王座が挑戦する「大和ハウス杯第62期十段戦」挑戦手合五番勝負第5局(主催:産経新聞社、特別協賛:大和ハウス工業株式会社)が4月30日、東京・日本棋院で行われた。
 立会人は片岡聡九段、記録係は伊藤優詩五段竹下凌矢二段。新聞解説は孫喆七段、ユーチューブ中継解説に蘇耀国九段。今回は両対局者の感想と蘇九段の解説をお届けする。(記・関根新吾)

先に入室していた芝野十段。井山王座が入室すると一礼を交わす

大和ハウス杯第62期十段戦五番勝負・第5局
主催:産経新聞社、日本棋院、関西棋院
特別協賛:大和ハウス工業株式会社
賞金:700万円
持ち時間:各3時間、5分前より1分の秒読み

 今回の十段戦五番勝負は互いに白番を入れあってフルセットにもつれ込む大熱戦。「正直、最近の国内戦の結果を見ても、井山さんはそれほど調子が良くないと思っていたのですよ。先日の棋聖戦の結果を見てもそうですし」と蘇九段。実際、直近の井山のムードは良くはなかった。今年の成績はこの十段戦まで14勝12敗と、あくまで例年の井山基準としては数字を残せていなかった。
 ただその不調な流れをガラリと変えたのが、つい先週中国で行われた爛柯杯。この爛柯杯に、井山は「背水の陣」と決意を固めて挑んだ(棋道web取材の井山のコメントをぜひ参照していただきたい)。井山は中華台北の強豪・許皓鋐九段や中国でも指折りの実力者・范廷鈺九段を下してベスト8進出を果たし、自身が依然として世界のトップクラスに位置していることを証明してみせたのだ。
 勝負師にとって勝利はなにものにも替えがたい良薬だ。「井山さんにとっては自信を取り戻す、『まだまだやれるんだ』という手ごたえをつかむことができた勝利だったのでは?」と蘇九段。
 序盤の機略、中盤での鋭い踏み込み、井山らしさにあふれた一局を振り返ろう。

最終局は握り直して手番を決める。井山が黒石1つ、芝野が白石を数え12個。井山の白番となった
芝野十段が初手を打ち、最終決戦が始まった


〈大和ハウス杯 第62期十段戦五番勝負・第5局〉
 芝野虎丸十段 白 井山裕太王座
持ち時間:各3時間、残り5分から秒読み

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〈第1譜〉1―21 「井山の研究」

 握って芝野の先番。この最序盤から井山が意欲的な一手を見せた。白8の二間は非常に珍しい。白8でよく見るのは白Aカケ、黒B、白C、黒9出切りからの戦いだけれども「若手の間ではよく研究されている変化。井山さんはこれを避けたのでしょうか」と蘇九段。
 この白8は新手ではなく、先行例として1図に2021年の第26回LG杯朝鮮日報棋王戦2回戦の一力遼-陳祈睿(先番)戦を紹介。黒1ハサミに対し、一力は白2の二間トビ。黒3には白4コスミ出しから戦いに入った。
 このような実戦例を踏まえて黒9には白10と変化。黒13まで「互いに1子を制し合う分かれは以前に考えたことがあった」と井山は研究済みの様子で、黒13まではまったく互角である。

1図
白番の井山王座が2手目を打つ

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