優勝めざして頑張ります！【第２回「桜ゴルフ杯女流プロ９路盤大会」（前編）】

2024年3月11日 16:00

　９路盤の楽しさを多くの方に知っていただこうという趣旨で昨年スタートした「桜ゴルフ杯女流プロ９路盤大会」（日本棋院主催、株式会社桜ゴルフ協賛）は、想像を絶する熱戦が大反響を呼んだ。多くのファンの期待に応え、今年も株式会社桜ゴルフの協賛をいただいて、第２回大会が２月24日に開催された。

　エントリーされたのは、第１回大会の覇者の謝依旻七段、上野愛咲美女流名人、星合志保三段、安田明夏初段の４名だ。
　謝七段vs.上野女流名人、星合三段vs.安田初段のカードが組まれ、それぞれ三番勝負を制した勝者が、決勝三番勝負に臨む流れ。昨年に勝るとも劣らない大熱戦ぶりをお届けしよう。

　石倉昇九段と吉原由香里六段、対局者による大盤解説の模様は、日本棋院公式囲碁チャンネルにて配信されているので、ぜひ合わせてお楽しみいただきたい。

主　催：日本棋院
協　賛：株式会社桜ゴルフ
出場棋士：上野愛咲美女流名人、謝依旻七段、星合志保三段、安田明夏初段

大会概要
【大会形式】
　４名によるトーナメント戦。１回戦・決勝戦ともに三番勝負。
　ニギリで先後を決め、２局目は逆の手番となる。３局目はニギリ直し。
【手合割】
　オール互先。先番６目半コミ出し。
【持ち時間】
　初手から一手20秒、１分単位の考慮時間３回（手合時計使用）

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【１回戦Ａブロック】
上野愛咲美女流名人 vs. 謝依旻七段

　１回戦Ａブロックは、謝依旻七段と初出場の上野愛咲美女流名人の対戦。注目の顔合わせとなった。

　謝七段は、昨年優勝した際「実は、少し前から９路盤の面白さにハマり、千局くらいアプリで打ちました」と明かした。「ただ、千局打てば少しは９路盤のことが分かるのだろうと勝手に思っていたのですが、全然そんなことはなかった」とも。

　対照的に、上野は「この大会の出場が決まってから、少しだけＡＩを観たりした…程度です」とのこと。

　果たして、どんな勝負になるのだろうか。ちなみに対局前の両者は共に自信がなさそうで……
　謝「早くツブレたらどうしよう」。上野「それはないです」
　上野「３分で終わるかも」。謝「いや、９路盤は意外と粘れる。気持ちの問題」
　などのやりとりが聞かれた。

　握って謝七段の先番となった。ルールは、途中１分の考慮時間が３回あるものの一手20秒という超早碁。

第１局

〈第２回桜ゴルフ杯女流プロ９路盤大会・１回戦Ａブロック〉
　黒　謝依旻七段　白　上野愛咲美女流名人
〈第１局〉１―60

　局面はどんどん変化していき、観る者にはたまらない臨場感だ。そして、１局目は、とんでもなく難解な展開となった。局面図がそのクライマックスシーンだ。

　黒１が打たれると、控室では吉原由香里六段が「やっぱり詰碁は大事ですねぇ」。黒３に白４が打たれると「きゃー、右も左も詰碁」「盤面全部詰碁～」と悲鳴があがり、「嫌ですねぇ」と安田明夏初段。
　「あきかちゃんも嫌なんだ（笑）」、「嫌ですよ（笑）」と笑い合うシーンも。この後は、一手一手に歓声があがりながら、控室も大いに盛り上がった。超難解な読み合いの中、黒がチャンスを逃したようだ。本局は、上野女流名人の白番中押し勝ちとなった。
　60手完、白中押し勝ち

第２局

　〈第２回桜ゴルフ杯女流プロ９路盤大会・１回戦Ａブロック〉
　　黒　上野愛咲美女流名人　白　謝依旻七段
〈第２局〉１―50

　２局目は、石倉昇九段の講評をいただいた。

　局面図　上野さんの黒番。白４は分散させる手で、相当有力です。９路盤は早くもこのあたりが最初の勝負所になってきます。謝さんの研究の範囲だったかもしれませんね。黒５とツケるとだいたい一本道になり、白10まで二隅の白石がともに生きていますので、この段階ですでに黒が大変な碁になっています。

　黒５では、相手に調子を与えないように、１図の黒１の方がよさそうです。いろいろ変化があり結論は出ませんが、白２なら、黒３と左下の白に迫っていきます。白４のとき、黒５、７と先手を取って、黒９から11と打てば、白は生きられそうにありません。こうなれば黒よしですから、白はどこかで変化することになります。
　黒５が敗着とは！　謝さんが上野さんの力を封じた一局でした。
　50手完、白中押し勝ち

第３局

　１勝１敗となり、タイトル戦の番碁を観ているような気分になる。３局目は握り直して、上野女流名人が黒番となった。

〈第２回桜ゴルフ杯女流プロ９路盤大会・３回戦Ａブロック〉
黒　上野愛咲美女流名人　白　謝依旻七段
〈第３局〉１―49

　黒１の小目は比較的珍しいそうだ。謝七段の研究を外そうという意図があったのかもしれない。９路盤は一手で形勢が大きく傾くこともある、という緊張感も、観る者にとってはワクワクする魅力だ。そして、どこまで進んでも互角、という展開にも感嘆させられる。局面図の△まで、両者譲らず互角の進行だという。

　ここで、右上の黒が心配なのでＡと打ちたくなるが、「白２に回られては白勝ち」と石倉九段が解説する。上野女流名人は迷わず黒１へ。控室では星合志保三段が「右上の詰碁を、上野さんは一瞬で読み切ったんですね」と驚きの声をあげていた。白４が強手に思われたが、石倉九段の解説によると、白Ａと打っている方がよかったとのこと。黒５から右上は生き、地合が足りずに謝七段が投了となった。
　49手完、黒中押し勝ち

　勝ち上がった上野女流名人は「１局目が面白かった！」といつもの爽やかな笑顔。惜敗の謝七段は、「上野さんは読みが早く、一手一手が鋭かったです。負けてしまったのですが、いろいろ研究にない形になったので、勉強になりました！」とやはり笑顔だった。

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【１回戦Ｂブロック】
星合志保三段 vs. 安田明夏初段

　１回戦Ｂブロックは、星合志保三段と初出場の安田明夏初段という顔合わせとなった。

　星合三段は、昨年１回戦で謝七段に惜敗。「今年こそは」と優勝を期していたことだろう。

　安田初段は、協賛社の「桜ゴルフ」に合わせ、「もうすぐ春ですし」と、桜色の衣裳に身を包んでの登場。「今年のＮＨＫの『新春囲碁スペシャル』という番組の中で、（鶴山淳志八段との）ペア碁の９路盤対局があって、その時に初めて練習したのですが奥が深かったです」とやや緊張気味だった。

第１局

〈第２回桜ゴルフ杯女流プロ９路盤大会・１回戦Ｂブロック〉
黒　安田明夏初段　白　星合志保三段
〈第１局〉１―36

　１局目は、石倉九段のワンポイント解説をいただいた。
　握って、安田初段の黒番だ。
　局面図　天元からスタートし、白４が面白い手です。白12ときたときが勝負所でした。部分的には黒13とツケたくなってしまうのですが、白14からかわされて、白20となると、白が２ヵ所で地を持って生きており白よし。ここで勝負ありです。