見出し画像

福田くん(中)、小川くん(小)初優勝【第45回少年少女全国大会】

 小学生と中学生の日本一を決める第45回文部科学大臣杯少年少女囲碁大会全国大会が8月6、7日に日本棋院東京本院で行われ、小学生98名、中学生97名が熱戦を繰り広げた。小学生の部は小川蓮くん(東京・暁星小4年)、中学生の部は福田佳朋くん(神奈川・川崎市立白鳥中3年)がそれぞれ初優勝となった。
(記・光井一矢)

第45回文部科学大臣杯少年少女囲碁大会全国大会
主催:日本棋院
後援:文部科学省、NHK
特別協賛:大成建設株式会社
※この大会は競輪の補助を受けて開催されました。

 1日目は一次リーグ3回戦と本戦トーナメント1回戦が行われた。保護者の人数も多く、会場の熱気はすごい。選手の交流の場だけでなく、保護者にとっても情報共有の場となっていた。
 選手の中にはプロ棋士やアマチュア強豪の子息も多く見られ、親子での入賞を狙う選手もいた。小学生の部では蘇耀国九段のご子息2名が本戦トーナメントに進出、兄の蘇聖皓くん(東京)がベスト8まで勝ち進んでいる。

島田逸生くん(青森、中2)と井上佐和子さん(愛知、小5)による選手宣誓
小学生名人、中学生名人を目指し、全国から代表選手が一堂に会した

小学生の部

 小学生の部は、比較的実績のある選手が勝ち上がった。
 決勝戦は2連覇を狙う横手悠生くん(東京)と、昨年12月のこども棋聖戦低学年の部優勝、今年3月のボンド杯全日本こども大会優勝に続くこども3冠を目指す小川蓮くんの対戦となった。
 二人は共に藤澤一就八段主催の新宿こども囲碁教室で腕を磨いており、トーナメント表を見たときに決勝で当たることもあるかなと意識していたそうだ。小川くんは普段はAIによる研究に時間を割き、「大会前には横手くんの碁を研究していた」とのこと。

〈第45回少年少女全国大会・小学生の部決勝〉
黒 小川蓮(東京) 白 横手悠生(東京)
145手・以下略、黒12目半勝ち

棋譜再生はこちら

〈総譜〉1―145

 黒が左辺白模様に19と入り、21と動き出したところから戦いが始まった。隅を捨てて、黒55まで辺で黒地を持って治まることができたが、小川くんは局後、「失敗したかなと思った」と感想をもらした。
 全局的にはこれからの勝負。今度は右辺白66、黒67から競り合いが始まった。お互い自分が攻めているつもりで打っている。黒141までどちらも無事に治まったが、競り合いの中で黒が右下に大きな地を作り、優勢となった。
 局後、横手くんは「もっと積極的にいくべきだった」と右下に踏み込まなかったことを後悔していた。

小川くん(左)と横手くんの決勝戦。対局室は、あこがれの「幽玄」の間
局後、大盤解説の前へ。右は解説の鶴山淳志八段

 同じ教室に通うライバル対決を制したのは小川くん。少年少女大会では初優勝となった。「東京都大会でこれまでなかなか抜けられなかったけど全国大会で優勝できてうれしい。10月からは院生になるので、その前にこの大会で優勝したかった」と笑顔を見せた。憧れの棋士は一力遼棋聖と藤澤門下の先輩・関航太郎九段。「今後はプロになって世界で戦える棋士になりたい」と将来の目標を語った。
 惜しくも連覇を逃した横手くんは、まず「悔しいです」と一言。双子の兄弟である将生くんは院生であり会場に応援に来ていたが、横手くんはプロは目指しておらず、「中学からも大会には出続けたい」と語った。
 3位決定戦を制したのは岩切知輝くん(宮崎)。岩切くんは優勝した小川くんとともに8月15日から17日に行われるワイズアカデミー杯に出場する。

ベスト4で記念撮影。左から3位、1位、2位、4位

【小学生の部入賞】
①小川 蓮(東京・暁星小4年)
②横手悠生(東京・大田区立調布大塚小6年)
③岩切知輝(宮崎・都城市立祝吉小5年)
④渡邉純成(福岡・北九州市立槻田小6年)
ベスト8
 桑原諒多(愛知・名古屋市立東白壁小5年)
 蘇 聖皓(東京・江戸川区立西小松川小5年)
 間野允陸(茨城・つくば市立春日学園義務教育学校6年)
 渋谷宗志(宮城・利府町立利府第二小5年)

中学生の部

 中学生の部では一次リーグから激戦が続いた。2年前の小学生名人・渡利大遥くん(京都)と今年の3月まで院生でAクラスに在籍していた内藤陸斗くん(埼玉)という注目の一戦は渡利くんが制した。しかし、その渡利くんもトーナメントの1回戦で姿を消すという展開に。その他にもジュニア本因坊戦準優勝の刈谷研くん(東京)もトーナメント1回戦で敗退。実績のある有力選手が次々と姿を消すことに。さらに予選リーグでは2勝1敗で4人が並ぶ混戦となったブロックもあり、実力の拮抗を思わせる。
 そんななか決勝に勝ち上がったのが、福田佳朋くんと森達輝くん(島根)の二人。福田くんは院生経験のある実力者。森くんは準々決勝で長尾想太くん(福井)、準決勝で角優輝くん(福岡)とこども大会で全国優勝をしている強豪を破っての決勝である。

実力伯仲の中学生の部、福田くん(左)と森くんが決勝へ。「幽玄」の間で打てるのがうれしい

〈第45回少年少女全国大会・中学生の部決勝〉
黒 福田佳朋(神奈川) 白 森達輝(島根)
175手完、黒中押し勝ち

棋譜再生はこちら

〈総譜〉1―175

黒73(45)白76(70)黒79(45)白134(105)黒169(115)

 黒が右上、左上で実利を取り、白が右辺を拡げていくという展開。局面が動いたのは黒65のノゾキから左下がコウになった場面。白は80、82と右下の連打で手を打ったが、まだ味残り。手を戻している余裕もなく、黒は中央をまとめた後に黒137と右下を手にして勝負を決めた。
 初の全国優勝を目指す同士の戦いは福田くんが制した。

局後、大盤解説の前へ。左は聞き手の星合志保四段

 優勝した福田くんは、大会前はネット碁を中心に実戦をこなしたという。「1年生のときは予選敗退だったので、トーナメント出場が目標で、その先はベストを尽くせればと思っていた。予選から大変な戦いが続いたが、乗り越えることができてうれしい」と大会を振り返った。今後の目標としては、「クレスコ杯ジュニア本因坊戦やボンド杯こども大会など他の大会でもいい結果を出したい」と語った。
 準優勝の森くんは三村智保九段のオンライン道場で週1回勉強しているという。「負けてしまって悔しいが、ここまで来れたのはうれしい。来年は優勝したい」と語った。

 全体的にレベルが高く、中学生の部では関東や関西といった都市部だけでなく、各地方の選手の活躍が目立った。その勉強法もAIやネット碁、オンラインというものが多く、全国どこにいても勉強ができる環境が整っているのを感じた。

ベスト4で記念撮影。左から3位、1位、2位、4位

【中学生の部入賞】
①福田佳朋(神奈川・川崎市立白鳥中3年)
②森 達輝(島根・出雲市立第二中1年)
③鳥越瑛太(宮崎・三股町立三股中2年)
④角 優輝(福岡・福岡市立筑紫丘中3年)
ベスト8
 伊東信義(北海道・釧路市立共栄中3年)
 長尾想太(福井・福井県立高志中2年)
 颯田彩吹(兵庫・伊丹市立笹原中2年)
 長谷川伶武(新潟・長岡市立大島中2年)

※全選手の成績など大会の詳細はこちら

ここから先は

0字

『棋道web』は日本棋院の公式WEB囲碁情報配信サービスです。棋戦やアマ大会の情報をはじめ、上達に役…

『棋道web』読み放題プラン

¥1,430 / 月

よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!