【一橋大学】桂篤五段の「囲碁-文化としての戦略思考-」
「ミライを育てる」の第2回は一橋大学で行われている授業「囲碁-文化としての戦略思考-」を紹介する。
本授業の担当講師は桂篤五段で、一橋大学の授業を担当して10年目になる。受講者は囲碁の未経験者30名で今回取材したのは全13回中の13回目最終回の授業。
最終回の授業内容は授業アシスタントの学生(アマ六段ほど)対受講生の代表者ペアの対局とその対局の大盤解説。対局のハンデは受講生ペアが黒番で5子局の白番40目コミ出しのルールで行われた。
桂五段は対局を大盤で解説することで、19路盤での対局のコツを学生に教えていく。
代表者ペアからは囲碁を始めて4か月程とは思えない、レベルの高い手が次々に飛び出していた。
代表者対局後は対局のまとめの解説をして、13路盤で学生同士の対局が行なわれた。学生たちは礼儀正しく楽しそうに対局しているのが印象的であった。
授業について2名の受講生に感想をいただいた。
「元々将棋の経験はありましたが囲碁はゼロから始めました。歴史や手筋など深いところが学べ、囲碁のゲーム性が面白かった」と代表対局を打っていた学生が教えてくれた。
もう一人の学生は独自の視点で囲碁について感じたことを話してくれた。
「囲碁は考えさせられることが多く、私は組織マネジメントや資源配分について考えさせられた。囲碁の面白いところは前提が同じところ。将棋は駒によって強さが違うので前提が違うが囲碁は前提が同じで一つ一つの同じ強さの石をどうやって活かしきるかが面白かった。マネジメントも同じような資源をどこに配分するかによってその資源の輝き方が変わる。囲碁は置き場所によって元は同じ石なのに強さが変わっていくのが面白かったです」
桂五段の授業のアシスタントをしてくれていた学生にも授業についてと今日の対局について話を伺った。
「初心者の人と4か月も携わる経験がなかったですが、教えるのが難しいことはありましたが初心者の人が楽しそうに打っていたのがよかったです。今日の対局については4か月前には全く囲碁のルールを知らなかった人がこんなに強くなっているのはすごいと感じました」
桂五段に授業についていくつか質問に答えていただいた。
・一橋大学の学生や今期の授業の印象を教えてください。
「オンライン授業の時は、どの範囲まで理解していて、どの点に疑問を持っているのかがわかりづらかったです。対面で表情を見ながら授業を行うことで、生徒一人ひとりに沿った指導ができて、より効率的に棋力向上が目指せるようになりました」
・授業について、大事にしている点は何かありますか。
「囲碁は着手禁止点以外、どこに打っても良いという特徴があります。生徒自身が戦略を練り、自分らしい碁を構築し、作り上げてゆく。そんな自主性を重んじています。将来会社に勤めたり、大学院へ進学したり、はたまた起業する時に、囲碁で培った創造力や忍耐力が生かされることを願っています」
・授業を見ていて、対局時の学生のマナーがしっかりしているように見えました。
「ガイダンスの段階から、マナー重視の旨は伝えてあります。石を持ちながら考えない等、礼節をきちんとすることで、お互い勝っても負けても気持ちよく対局を終えることができます。これは導入の段階でしっかりと覚えてもらうことで、悪い癖が身に付かなくなるので、入門指導する上でとても重要です」
・教える際に大学生ならではの特徴はありますか。
「私は小学生やご年配の方を教える機会もあるのですが、指導方法や言葉遣いなどは全く違います。取り巻く環境や年齢層に応じて、一人ひとりに合った指導法をというのが私のコンセプトでもあります。学生は囲碁のどの部分に興味を持っているのか、どんなユーモアを交えれば楽しく聞いてもらえるかなど、年々工夫を凝らしながら講義しています」
・最後に今後の抱負などを教えてください。
「今は半期しか授業を受け持っていませんが、入門の次の段階の中級クラスができるのが、理想の一つです。最終回の講義後には必ずと言っていいほど『どこか他に囲碁を継続できる教室等はありませんか』と聞かれます。せっかく囲碁を覚えても、それができる環境が無ければ、時間と共に囲碁熱が薄れてしまうでしょう。囲碁を覚えたその後のアシストの大切さを痛感しています」
「その後はぜひ仕事上や友人とのコミュニケーションツールの一つとして活用していただいたり、生涯の趣味としても末永く楽しんでいただけると嬉しく思います」
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