終始死角なし!一力が4勝2敗で奪取【第49期名人戦七番勝負第6局・棋譜解説】
芝野虎丸名人2勝、一力遼棋聖3勝で迎えた第49期名人戦七番勝負(主催・朝日新聞社)の第6局が10月30、31日に千葉県木更津市「龍宮城スパホテル三日月」で打たれ、一力遼棋聖が勝って4勝目を挙げ、初の名人位を奪取した。これで一力新名人は、棋聖、天元、本因坊をあわせ四冠となり、第一人者の地位を確固たるものにした。(記・内藤由起子)
対局前インタビュー
まず、両者の対局前インタビューをお届けする。
芝野虎丸名人
中1日で6局連続ありましたが、ようやく中4日、移動以外2日間休みがありました。2日だけでも大分違う。以前と比べると大分疲れはとれました。2日のうち1日は勉強するようにしたが、1日は休んでいました。
対局のあとは寝られないので、打ち掛けの晩は寝るチャンス。11時間寝ました。体調は自分でもびっくりするくらい良好。問題なくやれています。
名人戦の前は一力さんに連敗していました。一力さんとはとくに白番で勝っていますが、最近黒番で勝っていない。気にしているわけではないが、本局に勝てれば大きい。
過密日程で対局があることはありがたいことで幸せなことですが、やはり疲れました。決定局になる可能性があると 相手の雰囲気も違いますし、空気は感じることはあります。シリーズの後半はいい内容の碁が少ないのが、ひとつの課題。
これまで自分が追い上げている立場はあまりなかったので、今回勝てたら自信になります。それなりに自分の力は出せているという感覚もあります。
2勝3敗で苦しい状態はかわりません。そこは気にせず 集中して打てたらと思います。
一力遼挑戦者
第5局は神経戦で、午前中からゆっくりとした展開でどこから動かしていくか難しい、碁珍しい碁でした。どんな展開にせよその場面場面でベストを尽くして精一杯やっていきたい。
状態としては先週より上がってきているかなと思っています。あと1勝が大変、七番勝負は4勝するのが大変というのは、ここ数年、身をもって感じています。あまり勝ち負けのことは意識せずに臨めればと思います。
第1譜(1―44)「急戦模様へ」
これまで両者とも、白番の勝率がいい。黒番の芝野は正念場だ。黒24まで、黒の模様と白の実利という、両者の持ち味どおりの立ち上がりとなった。白26から最初の戦いが始まった。
白は34と厳しく切り、40とツケる筋を狙っている。すぐ中央を動くのは下辺の白が心配なので、先に白38と補強する。
黒も下辺を動く前にまず39と中央に手をかける。白40のツケコシには黒41と守る一手。下辺の白の守り方はいろいろあるが、一力は白44と中央進出に重きを置いた。
参考図1(注文の進行)
白34では1とハネるのをAIは推奨していたという。「ただ黒の注文なので、人間はなかなか打てません」と河野臨九段。
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