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〈無料記事〉【東京科学大学】平田智也八段、上野愛咲美六段の囲碁授業「囲碁で学ぶ実践力」~後編

 「ミライを育てる」の第11回は前回(第10回・前編)に引き続き、東京科学大学の授業「囲碁で学ぶ実践力」を紹介する。前編の記事はこちらからご覧ください。
 後編では第13回の上野愛咲美六段と受講生の対局の様子を紹介する。この回の授業では学生が3~5名ほどのチームに分かれて上野六段と9子局で対局する。チーム内で相談が可能で12回の授業で得た知識で世界チャンピオンに挑む。対局の開始前にメイン講師である平田智也八段から対局ルールや、棋譜の取り方などの説明が行われた。その後、第7回呉清源杯世界女子囲碁オープン戦での上野六段の優勝について報告が行われた。授業でも対局中であった準決勝の局面の解説を平田八段がして受講生と応援していたことや、決勝での緊張について、対局前の縄跳びの話などがされた。

呉清源杯の話をする両講師
対局を開始する上野六段

 この日の出席者数は52名で履修者のほとんどが出席しており、12組のチームが上野六段に挑んだ。対局が始まると受講生は真剣に相談して一手一手を重ねていた。時折平田八段が対局を見回りつつ、受講生同士の相談に加わってアドバイスをしていた。

対局のアドバイスをする平田八段

 今回は2局ほど受講生の許可を得たので棋譜を紹介する。

Aチーム棋譜

Aチーム棋譜
参考図

 Aチームの対局では黒28に打つ際に参考図の白1の場所に白に打たれても問題ないかという相談をしていた。相談の結果、参考図のような形に出来るので白1は大丈夫という判断をしていた。

Bチーム棋譜

Bチーム棋譜

 Bチームの対局でも活発に次の一手についての相談がされ、上野六段は受講生の手に対して苦しみながらも笑みがこぼれながら打っていた。

チームで次の手を相談する受講者たち

 しっかりとした相談のある12面打ちであったため、終局までいった対局はなかったものの受講生の打ちぶりには上野六段も満足そうで最後の挨拶でも楽しかったと伝えていた。

対局を振り返り楽しかったと話す上野六段

 これまでの授業について天谷賢治教授にお話を伺った。

「学生と先生たちの化学反応が見られました」と話す天谷教授

天谷教授
 「東京科学大学の入試には3時間の数学の試験があります。そのため東京科学大学の学生は頭の持久力があります。受講生は集中して楽しそうに授業を受けていて、考えるのが好きな学生と先生たちの化学反応が見られました」

「受講生が強すぎてびっくりしました」と話す上野六段

 学生との対局を終えた上野六段にお話を伺った。

・本日の対局について教えてください。
 「受講生が強すぎてびっくりしました。定石をナチュラルに打たれたり、囲碁将棋チャンネルを見てくださっていて、その形はよく出てくる形なのでこれでいいと言っている受講生がいて感動しました。記憶力もすごく、AIの布石などもありました。受講生同士で相談していることがなるほどと思わされることばっかりで、こことここで迷っているという手がどちらもいい手で嬉しくなりました」

・今期の授業を終えての感想を教えてください。
 「入門から教えるという経験はなかったので、12回の講義でここまでになるのかと驚きました。受講生が質問をしてくれたり、どういった局面で悩んでいるか話してくれて勉強になりました。受講生の皆さんには囲碁を趣味で始めてもらい、囲碁アプリなどをいれて日常に取り入れてもらえたら嬉しいです。また来年度の授業も楽しみです」

「一回は笑ってもらえるようにいろんな話をするようにしています」と話す平田八段

 平田八段に今期の授業についてお話を伺った。

・今期の授業の感想を教えてください。
 「自分にとって初めての大学での授業でしたが、最初はどうなるか心配でした。ですが学生の皆さんが優秀でまさかここまで打てるようになるとは思いませんでした。皆さん授業を休まず出席してくれます。なかなか普及活動というところで難しいところはあると感じていましたがこんなにたくさんの人に楽しんでやってもらえて自分にとって励みになりました」

・19路盤で教える際に工夫したところを教えてください。
 「どこで終局するかと、死活です。この石は死んでいるのか死んでいないのかというところの説明を毎回復習でするようにしています。生き死にの理解が深まっていくと迷子にならないので終局に向かいやすいかなと思います。
 あとは楽しむ場を提供する、授業に参加してもらいやすい雰囲気をつくるというのが一番で考えています。それを踏まえて技術などを教えます。なるべく一回はみんなに笑ってもらえるように授業の最初にいろんな話をするようにしています」

・来年度に向けての抱負や目標はありますか
 「今期の最終授業の最後にアンケートを書いてもらう予定です。その中で受けてもらった受講生自身が初心者を教えるとしたらどう教えますかという質問をします。最新の初心者である受講生たちが自分目線でどういったところで躓いて自分ならどういう風に教えるかを聞くことで、来年度教えるためのフィードバックが得られると思います。
 あとは楽しんで続けてもらえるようにしたいですし、理解力にも差があるのでどこに合わせるかを考えたいです。また来年度気をつけることとすれば、受講生の顔と名前を一致させてどの子がどのくらいの進捗かをこちら側で把握できるようにして、対局の時など終局が怪しい人には手厚くするような形にしたいです」

授業を終えた両講師

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